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股関節の疾患

単純性股関節炎

単純性股関節炎は、子どもに多く見られる一過性の股関節の炎症で、主に急な股関節の痛みや歩行困難が特徴です。この状態は一般的に一時的で、数日から数週間で回復しますが、股関節の痛みや動きの制限を引き起こします。

症状

股関節の痛み
急に股関節の痛みが発生し、片側に限定されることが多いです。痛みは太ももや膝に放散することもあります。痛みの部位がはっきりしないことも見受けられます。
歩行困難
子どもが足を引きずる、歩行が不安定になる、または痛みによって歩けなくなることがあります。
股関節の可動域の制限
股関節を動かす際に痛みを伴い、可動域が制限されることがあります。特に内旋(足を内側に回す動き)で痛みが強くなることが多いです。
発熱(まれに)
軽い発熱を伴うことがありますが、通常は高熱にはならず、一般的な全身症状は少ないです。

原因

単純性股関節炎の原因ははっきりとはわかっていませんが、以下の要因が関連していると考えられています。

ウイルス感染
呼吸器や胃腸のウイルス感染後に発症することが多く、感染後の免疫反応が関与していると考えられています。
外傷や過度の運動
軽度の外傷や過度の運動後に股関節炎が発生することもありますが、明確な関連性は定かではありません。

診断

単純性股関節炎の診断は、他の股関節疾患を除外するために、いくつかの検査を行います。

診察
股関節の痛みの場所や可動域を確認します。特に内旋や屈曲・伸展の動きで痛みが強くなる場合があります。
レントゲン検査
骨折やその他の病変を除外するために行われますが、単純性股関節炎では通常異常は見られません。
血液検査
炎症や感染の兆候を確認するために行われることがありますが、軽度の異常しか認められない場合が多いです。
超音波検査
股関節の滑液の増加を確認するために行われることがあります。

治療

単純性股関節炎の治療は、主に症状の軽減を目指す保存療法が中心です。

❶ 安静
痛みが軽減するまで、子どもに無理な運動を避けるように指導します。安静が回復の基本です。
❷ 痛みの管理
  • 鎮痛薬アセトアミノフェンが処方され、痛みを緩和します。これにより、痛みが軽減し、日常生活に戻りやすくなります。

回復

予後は良好
単純性股関節炎は通常、一時的なもので、数日から数週間で自然に改善します。長期的な影響を残すことはほとんどありません。
経過観察
症状が長引いたり、再発したりする場合は、他の股関節疾患(ペルテス病や化膿性関節炎など)を疑い、さらに精密検査が必要になることがあります。

予防

単純性股関節炎は原因がはっきりしていないため、予防法は特にありません。ただし、ウイルス感染後や外傷後に股関節の痛みが現れた場合、早期に医師の診断を受けることが重要です。

まとめ

単純性股関節炎は、子どもによく見られる一時的な股関節の炎症で、股関節の痛みや歩行困難を引き起こしますが、通常は数日から数週間で自然に回復します。治療は主に安静と鎮痛薬による症状の管理が中心で、予後は非常に良好です。

股関節唇損傷

股関節唇損傷(こかんせつしんそんしょう)は、股関節の周囲にある「関節唇(かんせつしん)」と呼ばれる軟骨組織が損傷する状態です。関節唇は、股関節のカップ(寛骨臼)と大腿骨頭(股関節の球状部分)を結び、股関節の安定性を保つ役割を果たしています。損傷すると、痛みや動きの制限が生じることがあります。

症状

股関節の痛み
典型的な症状は股関節の痛みで、特に股関節の前方や側方に痛みを感じることが多いです。痛みは歩行や体をひねる動作、座るときに強まることがあります。
関節の不安定感
股関節がぐらついたり、動かしたりしたときに引っかかりや音がすることがあります。この「クリック音」や「引っかかり感」は関節唇損傷の特徴です。
可動域の制限
股関節の動きが制限され、特に股関節を外側に開いたり、ひねったりする動作で痛みが強くなることがあります。
脚や膝に痛みが広がる
股関節から脚や膝にかけて痛みが放散することがあります。

原因

股関節唇損傷の原因には、以下の要因があります。

外傷
スポーツ中の激しい動きや転倒、交通事故などで股関節に強い衝撃が加わることで関節唇が損傷することがあります。
繰り返しの動作
サッカーやランニングなど、股関節を繰り返し使うスポーツや動作で、関節唇が摩耗し、損傷することがあります。
先天性の股関節の異常
先天的に股関節の形が異常である場合(例: 寛骨臼形成不全など)、関節唇に負荷がかかりやすくなり、損傷のリスクが高まります。
変形性股関節症
年齢とともに関節が変形し、関節唇に負担がかかることで損傷が生じることがあります。

診断

股関節唇損傷の診断は、以下の方法で行われます。

診察
股関節の動きや痛みの範囲、可動域の制限などを確認します。
画像検査
  • X線検査骨の異常や関節の形態を確認しますが、関節唇自体の損傷はX線では見つかりにくいです。
  • MRI検査関節唇や周囲の軟部組織の詳細な画像を取得し、損傷を確認します。

治療

股関節唇損傷の治療は、損傷の程度や患者の症状に応じて、保存療法から手術療法まで選択されます。

❶ 保存療法(軽度の損傷や痛みの管理に有効)
  • 安静と活動制限痛みが強い場合は、無理な運動や股関節に負担がかかる動作を避け、安静を保ちます。
  • 鎮痛薬非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などを使用して、痛みや炎症を軽減します。
  • 物理療法理学療法士による股関節周囲の筋力を強化するリハビリテーションが行われます。股関節の安定性を高め、再発を予防するためのエクササイズが中心です。
  • 関節注射痛みが強い場合、関節内にヒアルロン酸注射を行い、炎症を抑えることがあります。
❷ 手術療法(重度の損傷や保存療法で効果がない場合)
  • 関節鏡視下手術股関節内を小さなカメラ(関節鏡)を使って観察しながら、損傷した関節唇を修復する手術です。最小限の侵襲で行うため、回復が早いことが特徴です。
  • 関節唇の修復関節唇を縫合したり、損傷部分を切除したりすることがあります。
  • 骨切り術先天性の股関節の形態異常がある場合には、骨を切って形を整える手術が行われることがあります。

リハビリテーションと回復

リハビリテーション
手術後、股関節の安定性を回復するために、理学療法士の指導のもとで筋力トレーニングや可動域の改善を図ります。リハビリテーションは数週間から数か月かかることがあります。
復帰までの期間
スポーツや激しい活動に戻るまでには、通常6か月程度のリハビリテーション期間が必要です。

予防

正しい姿勢と運動習慣
日常生活や運動時に股関節に過度な負担をかけないようにすることが重要です。股関節周囲の筋力を強化し、姿勢を改善することで、再発リスクを減らします。
適切なスポーツの指導
スポーツを行う際には、股関節に負担がかかる動作を避けるための正しいフォームや動作を習得することが推奨されます。

まとめ

股関節唇損傷は、股関節の安定性を保つ関節唇が損傷することで、痛みや動きの制限を引き起こす状態です。外傷やスポーツ、先天的な要因などが原因で発生し、治療は保存療法から手術療法まで症状や損傷の程度によって選択されます。適切な治療とリハビリテーションを行うことで、通常は良好な回復が期待されます。

変形性股関節症

変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)は、股関節の軟骨がすり減り、関節の変形や痛みが生じる病気です。股関節は体重を支える重要な関節であるため、変形性股関節症になると日常生活の動作に支障をきたすことがあります。主に中高年に多く見られ、女性に発症することが多いです。

症状

股関節の痛み
初期段階では、股関節や太ももの付け根部分に軽い痛みを感じることがあります。痛みは歩行や長時間の立位で悪化し、休むと軽減します。進行すると痛みが持続的になり、安静時や夜間にも痛むことがあります。
動きの制限
股関節の動きが悪くなり、脚を開いたり、しゃがんだり、階段を上り下りするのが難しくなります。特に股関節の内旋(脚を内側に回す動作)が困難になることがあります。
関節のこわばり
朝起きたときやしばらく動かない状態から動き出すと、関節がこわばり動きにくく感じることがあります。
脚の長さが変わる
病気が進行すると、片方の脚が短くなることがあり、歩き方が変わってしまいます(跛行〈はこう〉)。

原因

変形性股関節症の原因には、一次性と二次性のものがあります。

❶ 一次性変形性股関節症
明確な原因がなく、加齢に伴う股関節の摩耗が進んで発症するタイプです。体重や日常生活での関節への負担が原因とされています。
❷ 二次性変形性股関節症
先天性の異常や外傷、他の病気が原因で股関節に変形が生じるタイプです。
  • 先天性股関節脱臼股関節が正しく発育しない先天性股関節脱臼がある場合、成人後に変形性股関節症を発症しやすくなります。
  • 臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)寛骨臼(骨盤のくぼみ)が浅いため、股関節が不安定になり、摩耗が進みやすくなります。
  • 外傷交通事故やスポーツでの股関節の骨折や脱臼が原因で発症することがあります。
  • 股関節の炎症関節リウマチや感染性関節炎など、股関節に炎症を引き起こす病気が原因になることもあります。

診断

変形性股関節症の診断は、以下の方法で行われます。

問診と診察
股関節の痛みや動きの制限についての症状を確認し、可動域の検査を行います。
X線検査
股関節の変形や軟骨のすり減り具合、骨棘(こつきょく、骨のとげ)の有無などを確認します。X線は変形性股関節症の診断に非常に有効です。
MRIやCTスキャン
軟骨や周囲の組織の状態を詳細に確認するために、MRIやCT検査を行うこともあります。

治療

変形性股関節症の治療は、症状の進行度や痛みの程度に応じて、保存療法と手術療法が選択されます。

❶ 保存療法(初期や中等度の変形性股関節症に対して有効)
  • 体重管理体重を減らすことで股関節への負担を軽減します。
  • 運動療法理学療法士による股関節周囲の筋力強化を行います。筋肉を強化することで、股関節への負担を減らし、症状の悪化を防ぎます。水中運動やストレッチが有効です。
  • 鎮痛薬非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や鎮痛薬を使用して、痛みや炎症を軽減します。
  • 関節注射ヒアルロン酸注射を行うことで、関節内の炎症や摩擦を減らし、痛みを緩和します。
❷ 手術療法(進行した変形性股関節症に対して行われます)
  • 人工股関節置換術症状が進行し、保存療法が効果を示さない場合、股関節を人工の関節に置き換える手術が行われます。人工関節により、痛みが軽減し、関節の可動域が改善します。

リハビリテーションと回復

リハビリテーション
手術後、理学療法士の指導のもとで筋力トレーニングや股関節の可動域を回復するリハビリテーションが行われます。リハビリテーションは数週間から数か月かけて行い、徐々に日常生活に復帰します。
復帰までの期間
軽度の手術であれば比較的早く回復しますが、人工股関節置換術の場合は、完全に回復するまでに数か月かかることがあります。

予防

体重管理
適正体重を維持し、股関節への負担を減らすことが重要です。
適度な運動
筋力を維持し、股関節をサポートする筋肉を強化することで、変形性股関節症の予防につながります。特に、水泳やウォーキングなどの低衝撃の運動が推奨されます。
正しい姿勢と動作
日常生活で股関節に過度な負担をかけないよう、正しい姿勢や動作を心がけることも予防に役立ちます。

まとめ

変形性股関節症は、加齢や股関節への負担によって軟骨がすり減り、痛みや可動域の制限を引き起こす病気です。保存療法による痛みの管理や、進行した場合の手術療法があり、適切な治療を行うことで症状の改善が期待できます。日常生活での体重管理や運動習慣も予防や治療に役立ちます。

大腿骨頚部骨折・
大腿骨転子部骨折

大腿骨頚部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ)と大腿骨転子部骨折(だいたいこつてんしぶこっせつ)は、いずれも大腿骨(太ももの骨)の上部にある部位が骨折することで、特に骨密度が低下している高齢者に多く発生します。これらの骨折は、歩行や立ち上がりができなくなるほどの痛みと、日常生活に大きな影響を及ぼすため、迅速な治療が必要です。

大腿骨の構造について

大腿骨頚部
大腿骨の上部にある「頚部(けいぶ)」は、球状の大腿骨頭と骨幹(骨の主な部分)をつなぐ細い部分です。この部分は比較的細く、特に高齢者の骨密度低下(骨粗しょう症)によって骨折しやすくなります。
大腿骨転子部
大腿骨頚部の下方に位置し、「大転子」と「小転子」という突起部分を含む領域です。この部分も、転倒などによって骨折することがあります。

症状

股関節や太ももの痛み
骨折すると、股関節や太ももに激しい痛みを感じます。立つことや歩行はほとんど不可能になり、動かすと痛みが増します。
脚の変形や短縮
骨折後、骨がずれてしまい、骨折した側の脚が短くなることがあります。また、脚が外側に回転してしまう(外旋位)ことも一般的です。
歩行困難
骨折後は自力で立ち上がったり歩いたるすることができなくなります。座位や寝ている状態でも痛みが持続することがあります。

原因

大腿骨頚部骨折および転子部骨折の主な原因は以下のとおりです。

転倒
高齢者では、転倒が最も一般的な原因です。骨密度の低下により、軽い転倒でも骨折が起こることがあります。
骨粗しょう症
骨密度が低下して骨がもろくなるため、転倒しなくても小さな衝撃や日常動作で骨折することがあります。
外傷
若年者の場合、交通事故や高所からの転落など、強い衝撃による骨折が多く見られます。

診断

大腿骨頚部骨折・転子部骨折の診断は、以下の方法で行います。

問診と診察
転倒や外傷の有無、痛みの場所や程度について問診します。また、脚の変形や脚長差、外旋位を確認します。
X線検査
X線撮影で骨折の場所や骨のずれを確認します。これにより、頚部や転子部のどこが骨折しているかを特定します。
CTやMRI検査
骨折が複雑であったり、X線では確認しにくい場合、CTやMRIを使用して骨折の詳細な画像を確認します。

治療

大腿骨頚部骨折と転子部骨折は、骨折の程度や患者の年齢、健康状態に応じて治療法が選択されます。基本的に手術が推奨されますが、以下のような治療法が一般的です。

❶ 手術療法
  • 骨接合術(内固定)金属のスクリューやプレートを使って骨を固定する手術です。主に転子部骨折やずれの少ない頚部骨折に対して行われます。
  • 人工骨頭置換術大腿骨頭や頚部が大きく損傷している場合、人工の骨頭に置き換える手術を行います。特に頚部骨折に用いられます。
❷ 保存療法(手術ができない場合)
  • 安静とギプス固定高齢や健康状態が悪いために手術が難しい場合、自然治癒を促します。ただし、保存療法では長期間の安静が必要で、寝たきりのリスクが高まるため、手術ができる場合は手術療法が優先されます。

リハビリテーションと回復

リハビリテーション
手術後、理学療法士の指導のもとでリハビリテーションを開始します。早期に股関節の可動域を回復させ、筋力を取り戻すためのトレーニングが行われます。歩行補助具(杖や歩行器)を使用しながら、徐々に日常生活に復帰します。
回復期間
手術後、早期にリハビリテーションを開始することで、回復を早めることができますが、完全に日常生活に戻るまでには数か月かかることがあります。高齢者の場合、体力や筋力の回復により長い時間がかかることがあります。

予防

骨粗しょう症の予防
骨粗しょう症の進行を防ぐため、カルシウムやビタミンDの摂取、適度な運動、骨密度の定期的な検査が推奨されます。
転倒予防
高齢者では、転倒のリスクを減らすために、家の中の環境を整えたり、適切な履物を選んだりすることが重要です。また、筋力強化やバランス訓練を行うことも有効です。
適切な運動
骨や筋肉を強化するために、ウォーキングや軽い筋トレなど、適度な運動を行いましょう。

まとめ

大腿骨頚部骨折および大腿骨転子部骨折は、高齢者に多く見られる骨折で、股関節周辺の骨が折れることで、歩行困難や激しい痛みを引き起こします。手術療法が一般的な治療方法であり、早期に適切な治療とリハビリテーションを行うことで、日常生活への早期復帰が可能です。反対側の骨折予防には骨粗しょう症の管理や転倒防止策が重要です。