四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)
「四十肩・五十肩」(しじゅうかた・ごじゅうかた)とは、肩の痛みや動かしにくさが突然起こり、肩の可動域が制限される状態を指します。
この症状は40代から60代の方に多く見られるため「四十肩・五十肩」と呼ばれていますが、実際には若い人でも起こることがあります。
医学的には「肩関節周囲炎」と呼ばれています。
症状
- 肩の痛み
- 肩を動かすと痛みが生じ、特に夜間に強くなることがあります。
- 肩のこわばり
- 肩の筋肉や関節が固く感じられ、動かしにくい状態が続きます。
- 可動域の制限
- 腕を上げるまたは後ろに回す動作が困難になります。例えば、洗髪や服を着替える動作がしづらくなることが多いです。
原因
五十肩の正確な原因はまだ明らかにされていませんが、次のような要因が関係していると考えられています。
- ❶ 加齢による変化
- 年齢とともに肩の関節やその周りの組織が硬くなり、インナーマッスル(腱板)が炎症を起こしやすくなります。
- ❷ 姿勢や生活習慣
- 長時間のデスクワークやスマートフォンの使用などで肩や首に負担がかかると、肩周りの筋肉や腱板に負担がかかりやすくなります。
- ❸ 外傷やけが
- 肩の筋肉や腱、関節を損傷するような動作やけががきっかけで、五十肩の症状が出ることがあります。
治療
五十肩は自然に治ることが多いですが、回復には数ヶ月から1年以上かかることもあります。治療には以下のような方法が用いられます。
- ❶ 痛みの管理
- 痛み止め(消炎鎮痛薬)や湿布を使って痛みを和らげます。
- ❷ 理学療法
-
- リハビリテーションにより肩の可動域を広げ、筋力を改善します。
- 物理療法や、理学療法士による運動療法が効果的です。
- ❸ 注射療法
- ヒアルロン酸注射が行われることがあります。これにより炎症を抑え、痛みを軽減します。
- ❹ 日常生活での工夫
- 肩に負担をかけない姿勢を保つことや、軽いストレッチを日常に取り入れることが勧められます。
五十肩は一度発症すると、症状が慢性的になる場合もありますが、適切な治療と自己管理を行うことで、多くの方が改善しています。
肩の痛みが続く場合や、動かしにくさが強い場合は、早めに医師に相談することが大切です。
腱板損傷
「腱板損傷」(けんばんそんしょう)は、肩の関節を支える筋肉と腱の集まりである「腱板」(けんばん)が傷ついたり断裂したりする状態を指します。腱板は肩のインナーマッスルであり、関節の周りを包み込むように存在し、腕を持ち上げたり回したりする際に重要な役割を果たしています。
症状
- 肩の痛み
- 腱板損傷があると肩の外側や上部に痛みが生じます。特に腕を上げるまたは肩を動かす動作で痛みが強くなることが多いです。
- 夜間の痛み
- 痛みが夜間に強くなることが多く、特に横向きで寝ると肩が圧迫されて痛みが悪化することがあります。
- 筋力の低下
- 腕を上げるまたは物を持ち上げるのが難しくなります。特に腱板の損傷が重度の場合、腕を持ち上げることができなくなることもあります。
- 肩のこわばりや可動域の制限
- 腱板の損傷によって肩の動きが制限されることがあります。
原因
腱板損傷は以下のような原因によって引き起こされます。
- ❶ 加齢による劣化
- 腱板は年齢とともに弱くなりやすく、特に50歳以上の方で自然に傷つきやすくなります。
- ❷ 外傷やけが
- 転倒や肩を強く打ったり、重い物を持ち上げたりする際に腱板が損傷することがあります。
- ❸ 反復的な動作
- 野球の投球動作やテニスのサーブなど、肩を繰り返し使うスポーツや仕事によって腱板に負担がかかり、損傷のリスクが高まります。
治療
- ❶ 保存療法
-
- 薬物療法鎮痛薬や湿布を使用して痛みと炎症を抑えます。
- リハビリテーション理学療法士の指導のもとで、肩の可動域を改善し筋力を回復するためのエクササイズを行います。
これにより肩の動きをサポートし、再発の予防にもつながります。
- ❶ 注射療法
- ヒアルロン酸注射を使用して、痛みと炎症を緩和します。
- ❷ 手術
- 保存療法で疼痛が改善しない場合や、腱板の完全断裂がある場合には、手術が必要となることがあります。手術では、傷ついた腱を修復し、肩の機能を回復させます。
- ❷ 関節鏡手術(かんせつきょうしゅじゅつ)
- 肩に小さな切開を加え、カメラと専用器具を使用して腱を修復する方法です。
日常生活での工夫
- ❶ 姿勢の改善
- 姿勢を正しく保つことで、肩にかかる負担を軽減できます。
そのためのリハビリテーションもお勧めいたします。 - ❷ 肩のストレッチと筋力トレーニング
- 腱板周囲の筋肉を強化し、再発を防ぐためのストレッチや運動を取り入れましょう。
- ❸ 重い物の持ち上げ方に注意
- 腕や肩に無理な負担をかけないように、正しい持ち上げ方を心がけることが重要です。
まとめ
腱板損傷は、症状の程度によっては日常生活に大きな支障をきたすことがありますが、適切な治療と予防策を取ることで、多くの方が症状の改善や再発の予防ができます。肩に痛みや違和感を感じた場合は、早めに医師の診察を受けることが大切です。
石灰沈着性腱板炎
「石灰沈着性腱板炎」(せっかいちんちゃくせいけんばんえん)は、肩の腱板にカルシウムが沈着し、炎症や痛みを引き起こす病気です。
カルシウムが結晶化して腱板に沈着することで、肩の動きに制限がかかり、激しい痛みが生じることがあります。中高年の女性に多く見られますが、男女問わず発症する可能性があります。
症状
- ❶ 突然の激しい肩の痛み
- 石灰が沈着して炎症が起こると、突然強い痛みが生じることがあります。
痛みは肩全体に広がり、動かすことが非常に困難になります。 - ❷ 夜間の痛み
- 腱板に石灰が沈着すると、特に夜間に痛みが強くなることが多く、眠りにくくなります。
- ❸ 肩の可動域の制限
- 痛みにより肩を動かしにくくなり、腕を上げたり回したりすることが困難になることがあります。
- ❸ 腫れや熱感
- 肩に炎症が強く起こると、腫れや触ったときの熱感が感じられることもあります。
原因
石灰沈着性腱板炎の正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、以下のような要因が関係していると考えられています。
- ❶ カルシウムの沈着
- 腱板の一部にカルシウムが異常に沈着することで炎症が発生します。カルシウムの沈着そのものは無症状の場合も多いですが、沈着したカルシウムが崩れて体に吸収される過程で炎症を引き起こし、強い痛みが生じます。
- ❷ 年齢やホルモンバランスの変化
- 中高年層に多く見られることから、加齢やホルモンバランスの変化が影響している可能性があります。
- ❸ 血行不良や過度の負担
- 血液の流れが悪くなることや、肩の酷使が石灰沈着の原因となる可能性もあります。
治療
石灰沈着性腱板炎の治療方法は、痛みの緩和や炎症の抑制を目指し、症状の重さによって異なります。次のような治療が一般的です。
- ❶ 保存療法
-
- 痛み止めや消炎鎮痛薬痛みと炎症を抑えるために、内服薬や外用薬(湿布や軟膏)を使用します。
- 理学療法(リハビリテーション)痛みが軽減したら、理学療法士による肩の可動域を広げる運動や、肩周りの筋力を強化するエクササイズを行います。これにより肩の動きが改善され、再発を防ぐ効果があります。
- ❷ 注射療法
- ヒアルロン酸注射を肩の関節内または石灰周囲に行うことで、炎症を速やかに抑え、痛みを軽減します。
- ❸ 石灰の除去
-
- 関節鏡手術保存療法で改善しない場合や、石灰が大きい場合には、関節鏡を使って石灰を取り除く手術が行われることがあります。手術は小さな切開で行われ、回復が早いのが特徴です。
- 石灰溶解療法:注射で石灰を溶解させることも可能で、少ない負担で石灰を除去できる場合があります。
- ❹ 体外衝撃波療法(ESWT)
- 体外から衝撃波を与えることで、石灰を粉砕し体に吸収させる治療法です。手術を行わずに石灰を取り除く方法として注目されています。
日常生活での工夫
- ❶ 肩の酷使を避ける
- 肩に無理な負担をかけないよう、日常の動作に注意が必要です。
- ❷ ストレッチや運動
- 肩周りの筋肉を柔軟に保ち、血行を促進するために、適度なストレッチや運動を行うことが再発予防に役立ちます。
- ❸ 良い姿勢を保つ:
- 長時間同じ姿勢を続けることは、肩への負担となります。デスクワークなどでは、適度に休憩を取って肩を動かすようにしましょう。
まとめ
石灰沈着性腱板炎は痛みが強く、日常生活に支障をきたすことが多いですが、適切な治療を行うことで症状は改善します。痛みが続く場合や腕を動かしにくい場合は、早めに医師に相談することが重要です。
反復性肩関節脱臼(関節唇損傷)
「反復性肩関節脱臼」(はんぷくせいかたかんせつだっきゅう)は、肩の関節が繰り返し外れる状態を指します。肩関節は体の中で最も可動域が広く、自由な動きができる反面、不安定になりやすい関節です。特に、関節唇(かんせつしん)と呼ばれる肩の安定性を保つ軟骨が損傷すると、脱臼しやすくなります。
症状
- ❶ 肩の脱臼
- 反復性脱臼の特徴は、日常的な動作(例えば、腕を挙げる、後ろに引くなど)で肩が簡単に外れてしまうことです。
- ❷ 肩の不安定感
- 肩が「ぐらぐら」する感覚や、肩が抜けるような不安定感が常にあります。動かしたときに肩が外れそうに感じることもあります。
- ❸ 脱臼時の痛み
- 脱臼が起こった瞬間、強い痛みを伴うことがあり、脱臼した肩を元に戻すまで動かすことが難しくなります。
- ❸ 筋力低下や可動域の制限
- 脱臼が繰り返されることで、肩の周りの筋肉が弱くなり、動きにくくなることがあります。
原因
反復性肩関節脱臼の主な原因は、最初の脱臼時に肩の構造が損傷され、その後の脱臼が繰り返しやすくなることです。以下が主な原因です。
- ❶ 外傷による損傷
- スポーツや事故で肩を強打したり、激しく捻ったりした場合に最初の脱臼が起こりやすいです。この時、関節を支える「関節唇」や肩の靭帯が損傷します。特に、若年者やアスリートではケガによる脱臼後に反復性脱臼を引き起こしやすいです。
- ❷ 関節唇損傷(バンカート損傷)
- 肩関節を安定させるための「関節唇」という軟骨が損傷することで、肩の安定性が低下します。この損傷を「バンカート損傷」と呼びます。関節唇の損傷があると、肩が外れやすくなり、繰り返し脱臼が発生します。
- ❸ 生まれつきの関節のゆるさ(肩関節の過可動性)
- 一部の人は生まれつき肩関節が通常よりも柔らかく、不安定なため、軽い動作でも脱臼しやすい状態です。この場合、外傷がなくても肩が外れやすくなります。
治療
反復性肩関節脱臼の治療は、脱臼の回数や原因、患者の年齢や活動レベルに応じて選ばれます。治療方法には保存療法と手術療法があり、次のような治療が一般的です。
- ❶ 保存療法
- 理学療法(リハビリテーション)肩周りの筋肉を強化し、肩の安定性を取り戻すために、理学療法士の指導のもとでエクササイズを行います。
肩の筋肉を鍛えることで、脱臼の再発を予防することが目指されます。
- 理学療法(リハビリテーション)肩周りの筋肉を強化し、肩の安定性を取り戻すために、理学療法士の指導のもとでエクササイズを行います。
- ❷ 手術療法
-
- 関節鏡視下バンカート修復術
関節唇や靭帯の損傷が大きい場合、手術が必要になることがあります。
手術では、肩に小さな切開を加え、関節鏡を用いて、損傷した関節唇を修復し、肩を安定させます。 - 直視下手術関節鏡手術で治療できない場合や、損傷が非常に大きい場合には、直視下に手術が行われることがあります。
- 関節鏡視下バンカート修復術
関節唇や靭帯の損傷が大きい場合、手術が必要になることがあります。
- ❹ 術後のリハビリテーション
- 手術後は理学療法を通じて肩の機能を回復させます。
徐々に肩の動きを取り戻し、筋力をつけるリハビリテーションを行います。完全な回復までには数ヶ月かかることが一般的です。
日常生活での工夫
- 肩に負担をかけない
- 肩を過度に使う動作や、スポーツではフォームの矯正が重要です。
特に、脱臼しやすい動作には注意を払い、肩の動きをコントロールすることが大切です。 - 肩の筋力を強化する運動
- 肩の筋肉や靭帯を強化するエクササイズを継続的に行うことで、脱臼のリスクを減らすことができます。
- 姿勢の改善
- 良い姿勢を保つことで肩への負担を減らし、肩の安定性を高めることができます。
まとめ
反復性肩関節脱臼は、放置すると肩の不安定感が続き、日常生活やスポーツ活動に大きな影響を及ぼす可能性があります。早めに適切な治療を受け、肩を安定させるためのリハビリテーションを行うことが重要です。
変形性肩関節症
「変形性肩関節症」(へんけいせいかたかんせつしょう)は、肩関節の軟骨がすり減り、関節が変形して痛みや動かしにくさを引き起こす状態を指します。肩関節の軟骨が徐々に摩耗することで、関節が滑らかに動かなくなり、炎症や痛みを伴います。これは加齢による肩の老化が主な原因で、中高年に多く見られる疾患です。
症状
- 肩の痛み
- 肩関節に炎症が起こり、痛みを感じます。特に腕を上げたり、動かしたりする際に痛みが増します。
- 可動域の制限
- 関節が変形し、肩をスムーズに動かせなくなります。腕を上げる、後ろに回すといった動作が困難になります。
- 肩のこわばり
- 関節の摩耗が進むと、肩が固く感じられ、こわばりが強くなります。
- 夜間の痛み
- 症状が進行すると、夜間に痛みが強くなり、眠りにくくなることもあります。
- 関節の音
- 肩を動かす際に、「ゴリゴリ」「カリカリ」といった音がすることがあります。
これは関節の軟骨がすり減って骨同士が直接擦れ合っているためです。
原因
変形性肩関節症の主な原因は、関節の摩耗と老化ですが、その他の要因も関与しています。
- ❶ 加齢による変化
- 年齢とともに関節の軟骨がすり減りやすくなり、関節が変形していきます。これは自然な老化の一部です。
- ❷ 肩の過度な使用
- 長年にわたって肩を酷使する仕事やスポーツを続けていると、関節に負担がかかり、変形が進むリスクが高まります。
- ❸ 外傷や脱臼の後遺症
- 以前に肩を脱臼したり、けがをしたりした場合、その後遺症として関節の変形が進行することがあります。
- ❹ 関節リウマチなどの疾患
- 炎症性の関節疾患(関節リウマチなど)が原因で、肩関節が変形することもあります。
治療
変形性肩関節症の治療は、症状を軽減し、肩の機能を維持することが目的です。
治療方法は症状の重さによって異なり、保存療法から手術療法まであります。
- ❶ 保存療法
-
- 鎮痛薬の使用痛みを軽減し、炎症を抑えるために鎮痛薬(内服薬や外用薬)を使用します。
- アイシングや温熱療法痛みが強い場合はアイシング、こわばりが強い場合には温めることで症状を緩和します。
- 理学療法(リハビリテーション)肩周りの筋肉を強化し、関節の動きを改善するための運動やストレッチを行います。リハビリテーションを通じて可動域を広げ、筋力を保つことが重要です。
- 生活習慣の改善肩に負担をかけないように、日常生活での動作に注意を払い、正しい姿勢を保つことが推奨されます。
- ❷ 注射療法
- ヒアルロン酸注射が行われることがあります。これにより炎症を抑え、痛みを軽減するとともに、肩の動きを改善します。
- ❸ 手術療法
- 保存療法で効果が得られない場合や、症状が重度の場合には手術が検討されます。
主な手術には次のようなものがあります。- 関節鏡手術軽度の変形であれば、関節鏡を使って肩の中を洗浄し、炎症を引き起こしている組織を除去します。
- 人工肩関節置換術変形が進行している場合は、肩関節を人工関節に置き換える手術が行われます。これにより、痛みが軽減し、肩の機能が回復することがあります。
日常生活での工夫
- 肩を無理に動かさない
- 肩に無理な負担をかける動作を避け、必要以上に肩を酷使しないよう心がけます。
- 適度な運動
- 適切なストレッチや筋力トレーニングを行い、肩周りの筋肉を柔軟に保つことで、関節への負担を軽減します。
- 姿勢の改善
- 日常生活での姿勢を見直し、肩や首にかかる負担を減らすことが大切です。
まとめ
変形性肩関節症は、関節の摩耗や変形によって痛みや可動域の制限が生じる病気ですが、早期に治療を行い、適切なリハビリテーションを続けることで症状を管理できます。肩に痛みや違和感を感じた場合は、早めに医師に相談し、悪化を防ぐための対策を取りましょう。
上腕骨近位端骨折
「上腕骨近位端骨折」(じょうわんこつきんいたんこっせつ)は、肩に近い部分の上腕骨(上腕の骨)の骨折です。特に高齢者や転倒しやすい人に多く発生し、肩に直接強い衝撃が加わることで生じます。この骨折は、上腕骨の中でも肩に近い部分(肩関節に接する部分)で起こりやすく、骨折の形や部位により治療法が異なります。
症状
- 肩や腕の激しい痛み
- 骨折直後に強い痛みが生じ、腕や肩を動かすことが難しくなります。痛みは特に腕を上げたり、動かしたりすると増します。
- 腫れやあざ
- 骨折箇所に腫れや内出血によるあざが現れ、肩から腕にかけての色が変わることがあります。
- 腕の変形や動かせない感覚
- 骨折により肩や腕の形が通常と異なる場合や、関節を動かせない感覚が伴うことがあります。
- 可動域の制限
- 骨折によって肩や腕を自由に動かせなくなり、特に腕を上げる動作が困難になります。
原因
上腕骨近位端骨折は、主に転倒や事故などによる外傷が原因です。以下が主な原因です。
- ❶ 転倒
- 高齢者が転んで手をついたり、肩から地面にぶつかったりして転倒することが最も一般的な原因です。骨粗鬆症の患者では、わずかな衝撃でも骨折が起こることがあります。
- ❷ 交通事故やスポーツ外傷
- 自転車やバイクの事故、スポーツでの衝突や転倒など、強い外力が肩に加わることで骨折することもあります。
- ❸ 骨の弱化
- 骨粗鬆症や加齢により、骨が弱くなると、軽い衝撃でも骨折するリスクが高まります。
治療
上腕骨近位端骨折の治療は、骨折の状態や患者の年齢、活動レベルに応じて異なります。
骨がずれていない場合や、軽度の骨折の場合は保存療法が選ばれ、重度の骨折や骨のズレが大きい場合には手術が必要です。
- ❶ 保存療法(骨が大きくずれていない場合)
- 三角巾やアームスリングによる固定骨がずれていない場合、肩や腕を固定し、自然に骨が治癒するのを待ちます。通常、3〜4週間程度の固定が必要です。
- 鎮痛薬の使用痛みを和らげるために鎮痛薬が処方されることがあります。
- リハビリテーション固定後、肩や腕の可動域を回復させるために、リハビリテーションが行われます。理学療法士の指導のもとで、肩や腕の筋肉を強化し、関節の動きを改善します。
- ❷ 手術療法(骨がずれている、複雑な骨折の場合)
- プレートによる固定手術骨が大きくずれている場合、プレートを使って骨を元の位置に戻し、固定する手術が行われます。
- 髄内釘固定術骨の内部に長い金属(髄内釘)を挿入して骨を固定する方法です。
- 人工肩関節置換術骨折が非常に複雑で関節部分が大きく損傷している場合、肩関節を人工関節に置き換える手術が行われることがあります。
- リハビリテーション
- 治療後、リハビリテーションは回復に非常に重要です。特に肩の可動域や腕の筋力を取り戻すために、段階的に運動を開始します。初期は軽いストレッチや肩の可動域訓練から始まり、徐々に筋力トレーニングや日常生活動作の復帰を目指します。完全な回復までには数ヶ月かかることがあります。
日常生活での注意点
- 転倒予防
- 高齢者や骨粗鬆症の人は転倒しやすいため、家の中の環境を整えて転びにくくすることが大切です。段差をなくしたり、滑りにくい靴を履いたりすることが役立ちます。
- 骨密度の維持
- 骨粗鬆症の予防や治療として、カルシウムやビタミンDを摂取し、適度な運動を行うことが推奨されます。医師の指導のもとで骨密度を保つための薬物療法が行われることもあります。
- 肩の過度な負担を避ける
- 肩に無理な負担をかけないように、日常生活の動作には注意が必要です。
特に回復期には、無理に腕を動かさないようにしましょう。
まとめ
上腕骨近位端骨折は、高齢者や転倒しやすい人に多く発生する骨折です。適切な治療とリハビリテーションを行うことで、肩の機能は回復します。骨折の症状が出たら早めに医師に相談し、治療を受けることが重要です。
鎖骨骨折
「鎖骨骨折」(さこつこっせつ)は、鎖骨(肩と胸をつなぐ骨)が折れるけがです。鎖骨は皮膚のすぐ下にあり、比較的弱い骨なので、転倒や衝突による衝撃で骨折しやすい部位です。特に、転倒時に手をついて受け身を取った際や、肩から地面に直接ぶつかることで起こることが多く、スポーツや交通事故、転倒によって発生します。
症状
- 肩や鎖骨の激しい痛み
- 鎖骨が折れるとすぐに痛みが生じ、肩や腕を動かすことが難しくなります。
- 腫れやあざ
- 鎖骨の周辺が腫れたり、内出血によるあざができたりすることがあります。
- 変形や突出感
- 骨折した部分が不自然に浮き上がったり、皮膚の下で骨の端が触れたりすることがある場合もあります。
- 腕の動かしにくさ
- 鎖骨が折れると、腕を持ち上げる動作が非常に痛く、困難になります。腕を自分で支えたくなることが多いです。
- 肩の位置の下がり
- 骨折側の肩が下がり、左右の肩の高さが不均衡になることがあります。
原因
鎖骨骨折の主な原因は外傷であり、日常生活やスポーツ、事故などで発生します。
- ❶ 転倒
- 手をついて転んだり、肩から地面にぶつかったりする転倒が、鎖骨骨折の最も一般的な原因です。特に自転車やバイクの事故、スポーツでの転倒などでよく見られます。
- ❷ スポーツ外傷
- ラグビー、スキー、スノーボード、自転車競技など、衝突や転倒のリスクが高いスポーツで頻発します。
- ❸ 交通事故
- 自動車事故や自転車、バイクの事故で、肩や胸に強い衝撃が加わることによって骨折が生じます。
- ❸ 出生時の外傷
- まれに、新生児が出産時に鎖骨を骨折することがあります。
治療
鎖骨骨折の治療は、骨折のタイプやずれの程度、年齢、活動レベルによって異なります。ほとんどの鎖骨骨折は保存療法で治癒しますが、重度の場合や骨が大きくずれている場合には手術が必要です。
- ❶ 保存療法(軽度の骨折や骨のずれが少ない場合)
- 三角巾やクラビクルバンドによる固定鎖骨骨折の多くは、三角巾やクラビクルバンドと呼ばれる専用の装具で固定し、自然に骨が治るのを待ちます。通常、3〜6週間程度の固定が必要です。
- 鎮痛薬の使用骨折による痛みを抑えるために、鎮痛薬が使用されます。
- リハビリテーション骨が治癒してきたら、肩や腕の動きを回復させるために理学療法士の指導のもとでリハビリテーションを開始します。最初は可動域訓練から始め、徐々に筋力を回復させます。
- ❷ 手術療法(重度の骨折やずれが大きい場合)
- プレートによる固定骨折が大きくずれていたり、複雑な骨折の場合、手術が必要になります。プレートを使って、骨を正しい位置に戻し、固定します。
- 髄内釘固定術鎖骨の内部に金属ワイヤーを入れて骨を固定する手術も行われることがあります。
- 手術後のリハビリテーション手術後は、固定が取れたら肩や腕の動きを取り戻すためにリハビリテーションが行われます。通常、徐々に運動を再開し、完全な回復には数ヶ月かかることが多いです。
日常生活での注意点
- 骨折後の安静
- 固定中は無理に肩や腕を動かさず、安静を保つことが重要です。痛みが和らぐまでは、肩に負担をかけない姿勢を心がけます。
- 転倒予防
- 鎖骨骨折の再発を防ぐため、特に高齢者は転倒しやすい環境を改善し、適切な履物を選ぶことが大切です。
- 適度な運動
- リハビリテーション中は、徐々に肩や腕の運動を取り入れ、筋力を取り戻すことが必要です。無理に急がず、少しずつ可動域を広げていきます。
まとめ
鎖骨骨折は、転倒や事故で簡単に発生しやすい骨折ですが、ほとんどの場合、適切な固定と安静で自然に治癒します。早期に医師の診断を受け、適切な治療を行うことで、痛みの管理と正常な肩や腕の機能の回復が期待できます。
肩こり
「肩こり」は、肩や首周りの筋肉が緊張し、痛みや重だるさを感じる状態を指します。多くの人が日常生活の中で経験する症状で、特にデスクワークやスマートフォンの使用が長時間にわたる現代では、非常に一般的な問題です。肩こりは首や肩、背中の筋肉が硬くなり、血流が悪くなることで引き起こされ、頭痛やめまいなどの症状を伴うこともあります。
症状
- 肩や首の痛み・違和感
- 肩から首にかけての筋肉が重く感じたり、鈍い痛みが出たりします。痛みは持続的な場合もあれば、動作によって悪化することもあります。
- 肩のこわばり
- 筋肉が硬直し、肩や首を動かすと「こり」や不快感を感じることが多いです。
- 頭痛やめまい
- 肩こりがひどくなると、緊張性頭痛や血行不良によるめまいを伴うことがあります。
- 腕や手のしびれ
- 肩こりが神経に影響を与える場合、腕や手にしびれや違和感が出ることがあります。
原因
肩こりの原因は、日常の習慣や姿勢、ストレス、身体的な要因などさまざまです。
- ❶ よくない姿勢
- 長時間のデスクワークやスマートフォンの使用による前かがみの姿勢は、肩や首に過度な負担をかけ、筋肉を緊張させます。猫背や首が前に突き出る姿勢も肩こりを引き起こしやすいです。
- ❷ 運動不足
- 筋力の低下や血行不良が原因で、肩周りの筋肉が硬くなりやすくなります。運動不足により筋肉の柔軟性が失われると、疲労が蓄積しやすくなります。
- ❸ ストレス
- 精神的な緊張やストレスは、筋肉を硬直させる原因となり、肩こりを引き起こします。ストレスが長期にわたると、慢性的な肩こりにつながることがあります。
- ❸ 眼精疲労
- 長時間のパソコン作業やスマートフォンの使用は目を酷使し、眼精疲労が肩こりを悪化させる要因となります。
- ❹ 血行不良
- 寒さや冷え、長時間同じ姿勢でいることにより、血行が悪くなり、筋肉が硬直しやすくなります。
治療
肩こりの治療には、症状の原因に応じたアプローチが必要です。
日常の習慣を改善することで、肩こりの軽減が期待できます。
- ❶ 姿勢の改善
- デスクワークやスマートフォンの使用時に、姿勢を正すことが大切です。背筋を伸ばし、耳と肩を一直線に保つことで、肩や首への負担を減らします。
- ❷ ストレッチや運動
- 定期的に肩や首を伸ばすストレッチを行うことで、筋肉の緊張をほぐし、血行を改善します。また、適度な運動を取り入れることで、肩周りの筋肉を強化し、こりの予防に繋がります。
- ❸ マッサージや温熱療法
- 肩や首の筋肉をほぐすためにマッサージを行ったり、温めたりすることで血流を良くし、痛みを和らげます。温湿布や温かいタオルを使うと効果的です。
- ❸ 生活習慣の見直し
- 長時間同じ姿勢を続けないようにし、1時間に1回は休憩を取って体を動かすことが推奨されます。また、適切な睡眠や栄養バランスを保つことも重要です。
- ❹ 眼精疲労のケア
- 目を酷使しないように、適度に休憩を取ることや、パソコンやスマートフォンの画面の明るさを調整することが推奨されます。
日常生活での注意点
- ❶ 正しい姿勢を保つ
- デスクワークや座り仕事では、背筋を伸ばし、肩が前に出ないように注意することが大切です。デスクや椅子の高さを調整し、無理のない姿勢を心がけましょう。
- ❷ 適度な休憩とストレッチ
- 長時間同じ姿勢でいる場合、定期的に休憩を取り、肩や首を軽く動かしたり、ストレッチを行ったりすることで筋肉の緊張を防ぎます。
- ❸ 適度な運動
- 軽いジョギングやウォーキングなどの全身運動を行うことで、血行が改善し、肩こりを予防することができます。
- ❸ 肩や首を冷やさない
- 冷えは筋肉を緊張させる原因になるため、冬場や冷房が強い環境では肩や首を冷やさないように心がけましょう。
まとめ
肩こりは日常生活で多くの人が経験する不快な症状ですが、適切な姿勢や運動、生活習慣の見直しで改善することが可能です。症状が続く場合は、専門家に相談し、必要な治療やリハビリテーションを受けることが大切です。